sakusha

382 女性はやはり強い、コロナ 2020年3月29日

過去の世界大戦で、男性の数が戦死によって急減しても、戦後、人口がすぐに元通りになりました。種としての人類の存続のためには、子を産む女性の数が十分ならば、男性は少なくても何も問題はないのです。

* * * * * * * *

進化が、種の絶滅を避けるために、子孫を直接に産み出す女性(あるいはメス)を、生物学的に強くしました。その総合的な結果が、女性の長寿です。

自己免疫疾患には、リウマチ、エリテマトーデス、バセドウ病、シェーグレン症候群、橋本病、クローン病、1型糖尿病など、多様な病態があります。罹患率の男女差は圧倒的で、発症率は女性のほうが2~10倍高くなっています。自己免疫疾患の多発と女性の長寿との関連について、いろいろな説があります。女性の免疫能が男性を上回っているために、副作用としての自己免疫疾患が生じる、というのが最も素直な理解です。致死的な疾患である感染やがんにおいて、女性のほうがより効率的に、病原体やがん細胞を体内から除去しているのです。

上の仮説の正しさが、コロナ感染でも証明されました。コロナウイルスによる感染者と死者の性別を、今までに明らかにしたのは、中国、フランス、ドイツ、イラン、イタリア、韓国の6カ国です。CNNの分析によると、コロナウイルスの感染者が男性に多いだけではありません。死者に占める男性の割合が、54%(韓国)から70%超(イタリア)に渡っています。6カ国平均では、男性が死亡する確率が、女性よりも50%も高くなっています。

飲酒や喫煙などによる生活習慣病が男性に多いことが、上のような結果をもたらしている、という推測があります。それを証明する統計はありません。生物系の基礎研究をやってきた私には、いろいろな知見から、女性が生物学的に強いことは、疑いようのない事実です。

381 見えてきたコロナウイルス 2020年3月20日

「見えない敵」ということで、世界が、新型コロナウイルスに対して集団性パニックに陥っています。疫学の知見や研究室における実験で、すでに次のようなことが分かっていて、ウイルスは見えてきています。

* * * * * * * *

ウイルス陽性者のうち、85%が無症状か軽症で回復。ウイルス検査では子供の陽性者は少ないが、感染は大人と同様に起きていると思われる。体内へ入ったウイルスが容易に除去されるので(No.380)、ウイルス増殖による細胞破壊がない。そのために子供は発症しない。ウイルスが体内で増えなければ、普通の健康状態にある子供が感染源になることは、考えにくい。ストレスが、子供や親に免疫力低下をもたらすので、休校は見当違い。

空気中に漂っているコロナウイルスは、感染力を3時間保つ。物体に付着した場合は、物によって4時間から3日以上感染力を維持する(米国アレルギー感染症研究所)。空気中の湿度が高ければ、コロナウイルス不活化までの時間が短くなる(米国ロッキーマウンテン研究所)。コロナウイルスに対する免疫反応は、インフルエンザウイルスと同じ(豪州ピーター・ドハーティー感染・免疫研究所)。

* * * * * * * *

ウイルス感染を完全に防ぐ方法はありません。無菌動物の飼育は、完全な無菌環境下で行いますが、人間の日常生活で無菌環境を作ることはできません。ウイルスとの共存が、ウイルス感染への基本的な哲学になります(No.379)。

イギリスは学校を休校にせず、他国よりもゆるい対策を実施しています。 基本的な考え方は、感染の拡大を容認し、集団に免疫を獲得させることが、長期的なウイルス対策になる、ということのようです。
そもそも、ワクチン接種は、感染を人為的に行うことを意味します(No.380)。感染拡大の容認を、集団へのワクチン接種と同様に考えるイギリス方式は、とても冷静(冷徹?)な対策と言えます。この対策には、発症者に適切な治療を実施できる、医療体制の構築が必要になります。

武漢とクルーズ船からの経験は、極度のストレス下にある集団では、免疫力の低下が著しく、それが重症化の要因になることを示唆しています。イタリアの医療体制はお粗末な上に、極端な街の封鎖で住民に極度のストレスを与えています。急激な感染拡大と重症化は、それらの結果です。

日本の対策はゆるいと批判されましたが、集団へのストレスが少なかったことが、抑止に効いたはずです。対策に免疫の専門家の意見を反映させなければ、逆方向の対策ができてしまいます。

380 免疫学からのコロナウイルス対策 2020年3月8日

ウイルスが感染力を失うことを不活化と言います。感染力を失わせたウイルスが不活化ワクチンで、感染力を保っているのが生ワクチンです。一般的に、不活化ワクチンよりも生ワクチンのほうが、免疫力の亢進に貢献します。生ワクチンの接種は、人工的にウイルス感染を引き起こすことを意味します。自然感染で免疫力が高まっているならば、ワクチン接種の必要はありません。

実験室環境で、インフルエンザウイルスが不活化されるまでの時間は、金属やプラスチックの表面に付着している場合は、2時間程度です。布や紙の中に存在していれば、不活化までの時間が長くなります。気温と湿度が高ければ、不活化までの時間が短くなります。夏に風邪の患者が減ることは、自然環境下のウイルス活性が、急速に低下することを示唆しています。また、体温の上昇によって代謝が亢進するために、免疫系が活性化されることも、風邪の流行が夏に減少する理由の一つになります。

インドネシアにおいて、コロナウイルス感染者の数が極めて少ない。高温多湿の環境が、上のような感染拡大の歯止めになっていることを予想させます。

* * * * * * * *

免疫細胞が集まっているリンパ節には、神経細胞の末端が網の目のように張り巡らされています。脳の活動が免疫系に影響を与え、免疫系の活動が脳にフィードバックされるのです。笑いがNK細胞(免疫細胞)を活性化することは、よく知られています。ホルモン系も、神経系・免疫系と一体化していて、ストレスで増えるステロイドが、免疫反応を抑制します。武漢とクルーズ船は、大きなストレスにさらされて免疫力が低下した集団において、風邪程度の病原性のウイルスが、どのように広がるのかという実験場になってしまいました。

中国で得られた知見から、子供たちの感染者が少ないことが知られています。発症する子供は、免疫力が低下した子供で、健康な子供にコロナウイルスが感染しても、急速に排除されてしまうことを示唆しています。まだ多くの病原体にさらされていない子供たち。特異的な免疫は数が少ないはずです。しかし、非特異的な免疫能が高く、コロナウイルスには十分に対応できると思われます。
メディアが、「今日は何人感染した」というニュースばかり流すので、感染者の数が毎日毎日膨大になっているような印象を受けます。実際には、回復者がいて、その分、現時点における感染者の数が少なくなります。中国では、少なくとも感染者の半数は回復したようです。回復した人の血清を感染者に注入する治療が行われていますが、これは、回復者の血清に抗体などの可溶性因子が含まれているためです。集団感染の収束のためには、全員が免疫を獲得する必要はなく、免疫獲得者が集団に散在するだけで、これらの人たちが壁になり、感染の広がりを阻止します。

腸の周囲には免疫細胞が集合していて、腸は重要な免疫器官でもあります。乳酸菌が免疫系の亢進に寄与することはよく知られているので、コロナウイルス対策として乳酸菌飲料を取ることには、意味があります。ビタミンCが免疫細胞を活性化することも、実験的に証明されています。心配ならばビタミンCも呑んでください。そして、毎日十分に笑ってください。

379 コロナよりも怖いインフルエンザ 2020年2月9日

現在までの感染状況を見ると、コロナウイルスはそれほど恐ろしいウイルスではない、と結論できます。

中国発のコロナウイルスの感染が、連日連夜報道されているために、インフルエンザへの注目度が落ちています。アメリカでの2019~20年におけるインフルエンザによる死者数が、1万人を超えています。今期のインフルエンザ感染は、日本においては比較的穏やかです。それでも死者数は3000人弱になります。

* * * * * * * *

コロナウイルスによる死者数は、インフルエンザよりもはるかに少ないので、コロナウイルスは心配する必要がない、という論理は常識的には受け入れられません。ヒト(生物)にとってウイルスとは何か、という進化論的な視点からウイルスに対する理解を深めると、心が少しは穏やかになるかもしれません。

私たちが持っているDNA鎖のなんと34%もの領域が、私たち生物のものではなく、ウイルス由来なのです(エッセイ27「脅威の生存メカニズム」)。ウイルス由来DNAは、遺伝子の情報発現を助けていて、ウイルスDNAがなくなれば、私たちは生きていくことができません。

ウイルスは、宿主を生かすことによって、自分たちの子孫を生き残らせているのです。宿主に死をもたらすことは、自分たちの絶滅を意味します。

宿主(例えばヒト)に新しく感染したウイルスは、宿主との共存能力がなく、自分たちが増えることによって宿主に死をもたらしてしまいます。動物からヒトへ感染したエボラウイルスが、そのような実例になります。インフルエンザウイルスによる死亡率が高いことは、動物からヒトへ感染するようになってから、まだ日が浅いことを示唆しています。

ウイルスは変異します。感染個体を生き残らせて、宿主として利用するために、病原性の低いウイルスへと変貌していきます。また、宿主の側でも、ウイルスに抵抗性のある個体が生き延びることによって、新しいウイルスに抵抗性のある個体が増えていきます。最後には、上に書いたような共生関係に入ります。これが進化の絶妙なメカニズムです。

378 超新星爆発による絶滅の危機 2020年2月9日

4億4000万年前に、地球上の85%の生物が死滅したことがあります(エッセイ2「絶滅をバネに進化する生物」)。数千光年以内の宇宙空間で発生した超新星爆発が、危機の引き金を引いたと考えられます。降り注ぐガンマ線がオゾン層を破壊したばかりか、生物を直撃しました。

* * * * * * * *

オリオン座に、明るく輝く1等星のベテルギウスがあります。昨秋から突然に光度が減少し、明るさが3分の1程度になりました。超新星爆発の前兆と予想されています。ベテルギウスまでの距離は650光年。室町時代に出たベテルギウスの光が、今やっと地球に届いています。日常的な感覚からは、とても遠くに存在する星ですが、宇宙的な距離感では、太陽系に密着していると言えます。

超新星爆発は明日起こるかもしれませんし、100万年後かもしれません。1日と100万年の時間の差は、人間にはとても大きいと感じられます。けれども、宇宙的な時間感覚では、どちらも一瞬の時間になります。即ち、宇宙スケールでは、太陽系の近傍ですぐに超新星爆発が発生することになります。

地球上の生物に大量絶滅の危機が来るのでしょうか?

ベテルギウスまでの距離を考えると、その危機の可能性は極めて大きい、と考えざるを得ません。100万年以内に大量絶滅が発生する、という恐ろしい予想。しかし、生物が大量死をまぬがれる可能性は極めて高い、と考えていい理由があります。ベテルギウスの自転軸が、太陽系に対して20度ずれているのです。ガンマ線は自転軸方向へ放出されるので、地球がガンマ線の大量照射を受けることはありません。

よかった!!

377 最大級のセキュリティ警告 2020年1月22日

アメリカ国家安全保障局(NSA)は、その存在自体が秘匿されていました。スノーデンによる暴露(拙著「サイバー世界戦争の深い闇」)が、世界に衝撃を与えましたが、現在でも活動の大部分が秘匿されています。予算額や人員数でさえも公表されていません。

NSAが、警告を一般向けに発することは、今までにありませんでした。その慣例を破って、今月、Windowsに深刻な欠陥があることが、NSAによって指摘されました。OSの核になる機能にぜい弱性があるのです。ハッカーが攻撃に成功すると、端末にインストールされているソフトウェアを、悪意のあるソフトウェアに自由に変えることができます。これによって、世界中の個人、ビジネス、国家機関に深刻な影響が広がることが、NSAによって指摘されました。

NSAの警告は、マイクロソフト社に発されただけではなく、全てのWindowsユーザーは勿論、ソフトウェアの開発者にも向けられています。

* * * * * * * *

三菱電機が大規模なサイバー攻撃を受け、情報が流失したことが、今月、報道されました。個人情報と企業機密が、外部に流出した可能性があることが、確認されました。防衛・電力・鉄道などの社会インフラに関する機微な情報と、機密性の高い技術情報や取引先に関わる情報は、流出していない、と報道されています。これらの情報は、外部から物理的に隔離されたサーバーに、収められていたようです(エッセイ52「メールを攻撃から守る方法」)。

三菱電機は防衛関連の業務を行っていて、以前から他国からのサイバー攻撃の対象になっています。今回の攻撃は、中国系のサイバー攻撃集団Tickによるとみられています。プロのハッカー集団による犯行は、当事者の特定でさえも容易ではありません。

376 一コマ漫画電子本を作成中 2020年1月3日

私には一コマ漫画を描く趣味があり、電子書籍の黎明期に、一コマ漫画を5冊の電子本にまとめて出版しました。合計600点ほどになりました。

黎明期の電子書籍には、ファイル・サイズの上から厳しい制限がありました。サイズが大きいと、かつての遅いインターネットでは、ダウンロードに時間がかかったからです。そのために、絵を小さくし、描きこみを抑えざるを得ませんでした。

* * * * * * * *

現在のネット環境下では、アマゾン650MB、アップル2GB、楽天100MBまでのファイル・サイズが、認められています(「電子書籍の確実な作成法」)。

現在、600点の中から300点ほどを選んで、アンソロジーを作成中です。絵を大きくし、描きこんでインパクトを強くする作業を行なっています。最初からデジタルで描いていたので、色彩でのインパクト強化を含めた描きこみを、容易にできます(「お描きの個人史」)。

「クールでカラフルな一コマ漫画」という副タイトルを、本につける予定です。政治や社会をテーマにした、風刺風の白黒の一コマ漫画が多いので、明確に差別化する必要があります。アニメ(「アニメと小説の工房」)の中に、一コマ漫画のネタをもとにして作成した作品があります。私の一コマ漫画の作風は、アニメのようになります。一コマにアニメのストーリー性を持たせています。

375 モンタの死後10年 2020年1月3日

我が家の最初の犬モンタは、10年前の1月7日に永眠しました。しばらくの間、骨壺を居間のキャビネットに置いていました。2年前にペット可の墓地を購入し、現在はそこで眠っています。

* * * * * * * *

死の2週間前のクリスマス・イブに、モンタは帰ることのない長男を、玄関で待ち続けました。そのような行動を取ったのは、その年のクリスマスだけでした(「最後まで大きく燃やした命の炎」)。モンタの死は、私たちには突然にやってきました。けれども、死を本能的に悟っていたモンタが、死ぬ前に長男に会うことを熱望した、と家族は理解しています。

犬には、クリスマス・イブという1年の特別な日に、一緒に成長した長男が、家に戻ることを理解し、記憶する能力があります。

昨年のクリスマスには長男が帰ってきて、自然にモンタが話題になりました。しかし、10年経った今でも、モンタの最後の日々を思い出すのはつらく、妻は涙を流しながら、「その話はここで止めたい」、と言いました。ペットの死は、子に先立たれた親の心境を、飼い主にもたらすのです。

374 中国に京都が出現 2019年12月5日

日本人がもっと注目していい、中国発のニュースがあります。京都の街並みが、大連に作られているのです。広さはディズニーランドの1.2倍弱で、完成は2024年の予定です。別荘や商店、レストラン、ホテルなど、1600もの建物が設けられます。予定されている店舗数は300。日本からの実店舗も入れる予定です。総工費は約1000億円。

京都の街並みにそっくりな別荘地で、完成した200棟が売りに出され、あっという間に完売しました。大きな家の価格は1億5000万円以上。富裕層しか購入できません。

街並みだけではなく、室内も日本風にこだわっています。旅館の部屋を写真で見ると、高級旅館のような雰囲気です。天然温泉もあります。建材も日本製にこだわり、輸入しているそうです。旅館の料理は徹底して和にこだわり、日本人の料理人を招聘して、従業員の訓練を行いました。旅館はすでに営業を始めていて、一泊で最低2万7000円の部屋が、需要に追いつかないそうです。

開発している企業の副総裁によると、京都には唐の文化残されているので、中国人にはなじみやすいのです。漢字もそうですが、中国の古い文化が、本国よりも日本のほうでよく保存されている、という現実があります。

完成後には、日本、特に京都が大好きな中国人観光客が、大挙して押し寄せることを予想できます。副総裁は、日本人観光客も、Made in Chinaの京都を訪れることを期待しています。

ここまで日本を好きになってくれることは、日本人としては喜ばしいですが、何事にも負の側面があります。京都を完璧にコピーしているので、中国の京都滞在で満足して、日本へ来る中国人観光客が減るかもしれません。登録商標などの不正使用が起こりそうです。日本で作られた日本製品のように見えながらも、商品名を勝手に使ったコピー商品が出回ることは、日本にとっては好ましくありません。

373 天皇制と日本人の精神 2019年11月17日

日本は、昔からの伝統を残したままで欧米化された、世界でも稀有な非欧米国として知られています。アメリカの旅行雑誌(月100万部発行)による世界最良の都市ランキングで、京都が1位になりました(「世界が日本人に注目している」)。歴史と現代がほどよく混ぜ合わされた京都の街に、世界中のひとがひかれます。

* * * * * * * *

天皇の即位に伴う行事が進行しています。費用や政教分離の視点からの批判が、メディアに見受けられます。

日本書紀の中に、日本武尊が自分を現人神の子と述べた、とあります。天皇を明確に神格化したのは、明治政府です。第2次世界大戦では、現人神である天皇が、他国侵略のために徹底的に利用されました。戦後は、人間宣言によって神格性が架空のものになりました。

大嘗祭などの行事で、天皇は神ではなく、人間の代表として神に平和と繁栄をお願いする立場にあることが、よく分かります。神は伊勢神宮に存在し、天皇はそこへ向けて祈りを捧げます。このような行事の内容から、天皇は卑弥呼の流れをくんでいる、ひとと神の間の仲介者と理解したほうがいいようです。
キリストがひとと神の間を取り持つように、天皇もひとと神の間を取り持つのです。キリスト教と神道は、全く異質な宗教のように見えますが、人間の本質から出る種々の宗教には、本質的な違いがありません。

私たちは、日常的には天皇の存在を意識していません。けれども、1300年もの間、伝統的な行事を執り行っている天皇家の存在が、日本人の精神形成に影響を与えていることは、間違いありません。

権力者は、自分の権力を誇示するために、軍事パレードのような、これ見よがしの権力誇示を行うのが普通です。ところが、大嘗祭などは、ひとに見せるための行事ではなく、日本の伝統を精神の内面に埋め込み、保持し続けるための行事になります。世界の権力者の中で、このような秘儀を行う天皇家は、極めて異例と言えます。

天皇家の行事は、それが現代にふさわしいかどうかが、問題ではありません。古い伝統を守り続けることに、大きな意味があります。

372 強化される独裁 2019年11月8日

中国では、中央委員会全体会議で、共産党の路線が決定されます。先月末に開催された会議の採択事項が、公表されました(日経新聞11月7日)。
中国が置かれている状況が厳しさを増しているために、習近平を中心にした、共産党政権の独裁強化が決議されたことが分かります。習体制の絶対化が、超核心的利益なのです。

採択事項で、一党支配の強化のために有効なIT技術の開発促進や、統治が容易な国有企業の巨大化をうたっています。
技術それ自体は、良くも悪くもありません。技術を悪くするのは、悪意を持っている人間です(拙著「サイバー世界戦争の深い闇」)。核分裂は発電に有効ですが、核爆弾にも使われます。ネットは、人間のあらゆる活動を効率的にしますが、世論操作やスパイ活動にも使われます。

* * * * * * * *

中国国外に住む非中国人の私たちが、特に注目すべき項目があります。ネットの世論管理を、「国内外で強化する」ことを盛り込んだのです。国外で、中国人だけに絞って世論管理することは不可能なので、他国の人たちの情報管理も強化する、と読むことができます。

一帯一路を受け入れている開発途上国へは、資金にものを言わせて圧力をかけ、中国の外交政策に従わせようとしています。典型的には、台湾との断交です。オーストラリアやイギリスなどの先進国では、潤沢な資金を使って、政治家や大学などを操作する活動が、行われています。

香港問題に関しては、「一国二制度」の「二制度」は、「一国」から派生すると述べ、統治の主権が北京にあることを明確にしています。「香港人が香港を統治する」と述べていますが、「愛国者を主体とする」という条件が加わり、北京の息がかかった人以外は、香港の統治に関わることができないようにしました。ファーウェイの任CEOは、共産党員の愛国者です(作者の思いNo.371)。

* * * * * * * *

中国人の平均給与はまだ低く、給与水準からは、中国は開発途上国にあります(エッセイ61「中国の覇権奪取戦略」)。言論統制による多様性の否定は、国の活力を低下させます。強硬な軍事進出などは、他国から反発を受け、長期的には、国全体の発展を阻害する要因になることは、間違いありません。

香港の大陸化ではなく、大陸の香港化が、中国人全体にとっての長期的な繁栄につながります。けれども、独裁政権は、国の長期的な繁栄よりも、現在の権力維持にこだわります。

371 超監視社会の恐怖 2019年10月29日

政治家であれ、企業人であれ、権力を握った人たちは、それを滅多に手放そうとはしません。あらゆる手段を使って、権力を維持しようとするばかりか、権力の更なる拡大に努めます。この衝動は、集団性動物である人間の本能から発している、と言えます。
憲法を改正してまで、永世主席になる道を確保した習近平が、あくなき権力欲の典型例になります。

中国では、多くの著名な中国人が行方不明になっています。当局によって拘束されていると思われますが、拘束した理由は公表されていません。北海道大学教授を含む十数人の日本人も、「スパイ容疑」で拘束されています。

インターポール(国際刑事警察機構)総裁の中国人ホンウェイが、中国へ帰国した昨年9月に身柄を拘束されました。彼の現状は、公表されていません。新疆大学(中国ウイグル自治区の大学)のティップ元学長は、東京理科大学で博士号を取得しました。中国共産党員であるウイグル人のティップ氏。北京の空港で2017年に拘束され、秘密裁判で死刑を宣告されました。死刑は、すでに施行されたか、間もなく施行されます。

ファーウェイの任CEOが、初めてメディアの前に立ったときに言った言葉。「私は共産党員で中国の愛国者です。社員には党員が大勢います」

中国国家情報法によると、国が情報提供を命じたならば、国民は拒否できません。拒否すれば、処罰が待っています。国民全員が、諜報活動に参加することになります。

香港の人たちの「反乱」は、日本人の想像を超えています。若者たちは、自分の将来を棒に振ることだけではなく、死をも覚悟しているように見えます。同じ中国人が確立した、大陸の政治システムを完全拒否する香港の中国人。

* * * * * * * *

以上の点と線を結んだ上で、中国の顔認証システムの高度化を見ると、肌寒くなります。スマホでさえも認証に必要ではなく、出入り口に取り付けられたタブレット端末に、自分の顔を認識させるだけで、買い物が終了し、電車に乗れるのです。

誰一人として監視カメラから逃げることができません。逃げられる手段を見つけた人は、それだけで要注意人物になってしまいます。揺りかごから墓場まで、独裁政権が全国民の動向を把握。権力者は、それを権力維持のための強力な道具として使います。社会信用システムで国民にポイントを付け、ポイントが低ければ、電車にも乗れず、買い物もできなくなります。体制批判をする人たちは、突然に行方不明になります。

370 一番多いiPhoneからのアクセス 2019年10月10日

Googleが、ウェブ管理者向けに、Googleアナリティクスというサービスを行っています。サイトへアクセスした人の、いろいろな個人情報を教えてくれるのです。勿論、ネットユーザーのプライバシーを侵害しない範囲での、統計的なデータしか教えてくれません。それでも、ウェブ管理者にとっては、自分のサイトのプローモーションに役立つ、貴重な情報になります。

* * * * * * * *

「夢と現実のエッセイ評論」は、各ページの論評が長く、スマホで読むのは大変です。私は、スマホでも読みやすいレイアウトにするために、最大限の努力をしています。けれども、長文であることを変えることはできません。

私のサイトへは、画面が大きいデスクトップからのアクセスが、最も多いのだろう、と以前は勝手に想像していました。Googleアナリティクスのサービスを受けるようになってから、その先入観が間違っていたことを知りました。

最近の1か月の間に、私のサイトへのアクセスに使われた「デバイスのランキング」は、以下のようになります。

  1. モバイル 58%
  2. デスクトップ 36%
  3. タブレット 6%

使われた「ブラウザのランキング」は次の通りです。

  1. サファリ 37%
  2. クローム 32%
  3. エクスプローラーとエッジ 18%
  4. その他 13%

上のデータが示していることは明確です。小さな画面では読むのが大変な私の書き物を、デバイス別では、iPhoneユーザーが、最も多く読んでくれているのです。

以下の「モバイルデバイス別のランキング」が、さらに上の確信を補強します。

  1. iPhone 58%
  2. iPad 6%
  3. ウインドウズRTタブレット 1%
  4. その他 35%

モバイルユーザーの皆さん、時々目を休ませながら、私の長文を読んでください。

369 関電幹部の言い訳に強い「違和感」 2019年10月3日

「死人に口なし」。関西電力の社長や会長が、「お世話になった」高浜町の元助役に罪をなすりつけています。

社長の弁解にいろいろな「違和感」を感じました。特に、「元助役からとてもお世話になったので、金品を受け取らざるを得なかった」、という発言には驚きました。世間一般の常識では、金品が動くルートは逆になります。お世話になった人が、お世話をしてくれた人にお礼をするのが、世間一般の常識ですよ。さらに驚いたのは、「金品の原資の出所については、全く考えが及ばなかった」という発言です。まさか、町役場の助役が、3億数千万円の金品を自分のポケットマネーから捻出した、などと考えていたのではないでしょうね。

日本列島は、世界で最もぜい弱な地盤に乗っています( 「地震・原発列島」)。今まで活断層が発見されていない地域でも、新しい活断層が突然にできる可能性があります。若狭湾周辺には、活断層が網の目のように張り巡らされているのです。京都や大阪に近いこんなところに、14基の原発が作られたことに、私は今までとても強い「違和感」を持っていました。

今回の問題が暴露されたことで、「なるほど」と、違和感の一部が解消されました。国税が解明したので、国税にエールを送りますが、税務署にしか解明できなかったところに、問題があります。建設費だけで、数千億円から1兆円を超える金が動く、原発事業の深い闇。今回の暴露で明らかになったことは、氷山の一角に過ぎないと思います。

* * * * * * * *

米食品医薬品局(FDA)が、日本にある米製薬企業の研究所を、査察したことがあります。査察官は、接待を完全にことわっただけではありません。社員食堂で昼食を取ることもなく、帰りに日本の民芸品をおみやげとして渡そうとしても、決して受け取りませんでした。「受け取らなければ日本人の気分を害するから、受け取っておこう」、などとは考えないのです。

368 中国のディープフェイク・アプリ 2019年9月13日

国際市場調査会社IDCによると、中国国内の公共監視カメラの設置台数が、2022年に27.6億台に達する見込みです。なんと国民一人当たり2台。NGOフリーダム・ハウスによる調査では、中国国民の自由度は、アンゴラよりも評価が低く、世界最低国のうちの一つになっています。

香港のデモの参加者は、マスクで顔を隠しています。監視カメラで撮影された映像が、中国当局へ流れている可能性があるのです。通りを歩くデモに参加しただけで、一国二制度の崩壊後に、社会信用システムで減点されるかもしれません。

* * * * * * * *

先週、次のようなレポートがオンライン版CNBCに載りました。

ビデオの顔を、リアルに他人の顔に変えてしまうアプリZaoが、中国で大人気です。アンドロイドとiPhoneで、無料でダウンロードできます。このアプリを使って、実写と変わらないディープフェイク・ムービーを、作ることができます。

プライバシーが限りなく軽い中国で、メディアが珍しく批判をしています。Zaoの提供企業が、ユーザーが作ったフェイク・ムービーのデータを、自由にできることが問題だと言うのです。また、SNSのWeChatが、Zaoで作った動画の投稿を禁止しました。Weibo(中国版ツイッター)は、個人の生体情報を保存しないことを約束しました。中国企業が、プライバシーの問題でこのようにすばやく声明を出すことは、珍しいのです。しかし、具体的にどう対応するのかが不明なので、プライバシーが守られる保証はありません。

新しいものを、なんでもすぐに取り入れるように見える中国人ですが、技術に対する不信感が芽生えているようです。 ディープ・フェイクが急速に拡大することに対して、不安を感じるユーザーがいます。Zao提供企業が、中国政府の司法に組み込まれていることが、不安を増大させます。提供企業は、「安全保障」や「公衆衛生」にとって脅威になったり、当局や裁判所が望むならば、個人のデータを消去しないで当局に提供する、と言っています。

ディープ・フェイクは、政治的に利用されるだけではなく、個人攻撃にも使われることを予想できます。ディープ・フェイクで作られたオバマ大統領が、話題になったことがありました。個人が、知らない間に犯罪を犯したことになる可能性があります。

367 米中、判断が遅れる識者 2019年9月7日

私が「中国をつぶすアメリカの戦略」を書いたのは、1年3か月前の昨年5月でした。その論評で、アメリカが中国へ提出した「枠組みの草案」が、明確な最後通告であることを指摘しました。それ以前の事態の推移を考慮すると、「中国をつぶすアメリカの戦略」が正式に発動されたことには、疑いの余地がなかったのです。けれども、識者の多くが、その当時も現在もノンビリしています。昨日のオンライン版CNBCに、次のような論評が載っていました(要旨)。

「米中貿易紛争はすでに第2次冷戦の初期段階」
米中紛争はトランプの手を離れた。この紛争は、貿易だけではなく、技術と地政の覇権争いになっている。この争いを、もはやトランプには止めることができない。

私の判断では、ディール重視のトランプは日和見主義者です。ZTEへの支離滅裂な対応がそれを示しています(「中国をつぶすアメリカの戦略」)。

アメリカと中国(それに日本)を含む世界史の視点から解析し、米中衝突は必然であると結論したことを、「中国の覇権奪取戦略」「アメリカの対中国全面攻撃」に書きました。トランプだけではなく、対中戦略を動かしているナバロもライトハイザーも、中国側の習近平も、歴史の必然に呑み込まれている操り人形にすぎない、ということが可能です。推論をこのように展開すると、米中対決がますます厳しくなることを予想できます。ナバロの冷徹な分析をもとにして書かれた、「米中もし戦わば」(文藝春秋)が、現在と今後の状況の動きを予想するための重要な資料になります。

366 「湧き出る宇宙」売れ筋ランキング 2019年9月7日

「無から湧き出る宇宙」の執筆に、私は全力をつくしました(No.364)。販売開始は、我が子を世に送り出したような気分です。当然のことながら、皆さんからの反応が気になります。

今、「Amazon売れ筋ランキング」をチェックしました。販売開始からほぼ1か月後の現在、「無から湧き出る宇宙」のランキングは、次のようになっています。このランキングは時々刻々と変わります。

宇宙・天文学 9位
物理学 18位
理論天文学 5位

私の予想以上に「我が子」が健闘しています。理論天文学分野で5位になっていますので、私の空想理論天文学に興味を持っていただいた方が、多いのだと思います。この本に興味を持ち、わざわざ購入までしていただいた皆さんに、深く感謝をします。

365 和戸川書籍のバージョンアップ完了 2019年8月29日

「無から湧き出る宇宙」の電子書籍作成を終え、過去に作成した電子書籍には、修正が必要なことを理解しました。

* * * * * * * *

電子書籍には、規格としてリフロー型と固定型があります。リフローはウェブサイトのレスポンシブと同じで、画面サイズに合わせてページの表示が変化します(パソコン、タブレット、スマホ)。これは、レイアウトが変化することを意味します。固定では、どのような画面サイズでも、レイアウトに変化がありません。リフローにすると、端末によってはレイアウトが崩れてしまうことがあります。そこで、全書籍の規格を固定にして、レイアウトを安定させ、バージョンアップを実施しました。

もう1つの修正は、読みやすさに関するものです。電子書籍のページの操作は、紙の本よりもやりにくいと思います。それは、読みにくさにつながります。そこで、著者として強調したい文章を太字にしました。私のウェブサイトが、そのスタイルになっています。ページを読み飛ばすときに、著者が強調したい文章が真っ先に目に入り、著者が意図している内容の理解が容易になるはずです。

本を執筆するのには大きな努力が必要ですから、著者の意図を作品から容易に読み取ってもらえるように、著者には読みやすさの追求が必要になります。

アマゾンの電子書籍では、旧バージョンの購読者は、無料で新バージョンをダウンロードできます。読みやすくなった新バージョンを、ぜひダウンロードしてください。

364 宇宙誕生の瞬間 2019年8月14日

「無から湧き出る宇宙」をやっと書き終え、アマゾンから販売を開始しました。情報の収集と整理を始めてから脱稿するまでに、4年に近い月日が経過しました。
私のサイトでアクセス数が一番多いページは、「外側から見た私たちの宇宙」です。このエッセイ評論をおもしろいと思った方には、拙著をさらにおもしく読んでいただけると思います。

* * * * * * * *

私たちの宇宙の経験則を使って確立された、物理法則と数学公理は、目に見える範囲の宇宙空間にしか適用できません。アインシュタインもホーキングもその外側へ踏み出さないように、理論を注意深く構築しました。誕生前の宇宙には既知の物理学も数学も適用できないばかりか、そこを認知することも不可能です。完全に「無の宇宙」になります。一般的な天文学の著書には、「宇宙は無から誕生した」という記述があり、説明はそこで止まってしまいます。

量子力学が解き明かしている物理現象は、「有の宇宙」が「無の宇宙」と一体化していることを、示唆しています。目に見える範囲で生じている現象が、認知の地平のかなたとの相互作用によって生じる、と考えなければ、種々の物理現象の説明が不可能になるのです。

人間の認知能力が極めて限定されているために、思考には厳しい制約がかかっています。「常識」から自らを解き放つことによって、見えない宇宙の片鱗が見える可能性があります。「無から湧き出る宇宙」が、思考の限界に挑戦することに興味を持っている皆さんに、少しでもお役に立つならば幸いです。

アニメが YouTubeの和戸川ページ に入っています。 You can find animated cartoons on Watogawa Page of YouTube .
広告(Googleアドセンス)